リングに上がれば1対1、格闘技は個人競技だ。しかし、さらなる強さを求めていくと一人の力では勝てなくなる。ファンの応援はもちろんだが、後押しやサポートをしてくれるセコンドや練習でのトレーナーや仲間などが重要な力となってくるのだ。つまり、チームの存在が大きなものとなってくる。この特集ではその「チーム」にスポットを当て、強さの秘密に迫っていきたい。シュート・ボクセ・アカデミー、GRABAKAに続いての登場は、ダン・ヘンダーソンの二階級制覇達成、脅威の新人ソクジュの登場とまさに飛ぶ鳥を落とす勢いのチームクエスト。チームのリーダー格ライアン氏に話を聞く。
本を出版し、博士号も持っているライアン氏は何者?
――ライアンさんとダン・ヘンダーソンは、どのようにして出会ったのですか?
「僕がアリゾナ州立大学でレスリングをしていて、バルセロナオリンピックの後、ダンが僕の大学に1年間採用されてそこで出会ったのさ。そこから友だちになって、一緒に住むようになって…大学を卒業してからも、カリフォルニアでダンやヒース(・シムズ)とレスリングをしていたんだ。それからずっと僕たちは友だちなんだよ」
――ライアンさんは本の出版もされていると聞きましたが、なぜ、そしてどんな本を出版されたのですか?
「精神的な動機付けを促す本だよ。MMAとは関係ないんだけど、64ページの本で、1ヶ月前くらいに自費出版で作ったんだ」
――博士号も持っているとのことですが、それはなぜですか?
「カイロプラクティックの博士号を、10年前にロサンゼルスで取ったよ。大学に通っている間、僕はダン、ヒース、そして他のレスラーたちと一緒に住んでいて、彼らはみんなオリンピックを目指してトレーニングを積んでいたんだ。ヒースは2000年のオリンピックチームに選ばれたし、ダンは96年に2回目のオリンピック出場を果たした。つまり僕は家に帰ればワールドクラスのアスリートがいて、僕の実験台になってくれたってわけさ。だからダイエットのことや体調管理のことなんかはもう13年以上もやっていることで、彼らにはとても感謝している。学校を卒業するころには、僕には既に多くの経験があったんだからね。そういえばダンとはオリンピックにも行ったし、レスリングのトレーニングキャンプにも行ったし……今やっていることは、過去の経験を生かして長いプロセスをかけて築き上げたものなんだ」
――10年前のルームメイトが、今ではチャンピオンですね。
「彼らのことを家族だと思っているし、本当に愛しているよ。僕が情熱を持ち、そして楽しんでやっていることに対して、才能あふれる人たちが僕を信頼して一生懸命がんばってくれたんだ。僕は本当に幸せだよ」
チームクエストは本当の“チーム”だ
――チームクエストにおけるライアンさんの役割とは?
「一番大切なことは、その人を知ることだと思うよ。僕は打撃も寝技もエキスパートじゃないから、それぞれのエキスパートであるコーチたちがいる。僕の役目はそれぞれが持っている力を全て引き出すことで、つまりその人に何が必要か、ゴールは何なのか、そのゴールを達成するためのプランはどういうものなのかを見極め、手助けしてあげることなんだ。チームクエストは本当の“チーム”だからね、ある意味、僕がリーダーの役目を担い、それぞれが進むべき道を見出し、目的地にたどりつけるよう先導しているんだよ」
――例えばダンとソクジュのトレーニングの方法は違うのでしょうか?
「人間はそれぞれ特性が違うから、その人に最適なトレーニング方法が必要なんだよ。まずはその人と話してどうしたらいいか、その人のモチベーションを上げるにはどのボタンを押せば良いのか、人参をあげればいいのかムチで厳しくした方がいいのか、両方なのか…など、人によって全て変えなければいけないんだ。
例えばチームの一人であるジェイソン・ミラーは、ダンやソクジュとはまったく違うトレーニングをしている。基本的なことはみんな一緒だけど、細かくなるにつれてそれぞれの選手に合わせる必要があるんだ。さらにダイエットが必要だとか、トレーニングしすぎだとか、試合に負けてストレスが溜まっているとか、大きな試合が近いとか……置かれている状況に合わせて、絶えず合わせていかないといけないね」
――自分自身ファイターになろうとは思いませんでしたか?
「僕もアマレスをやっていたし、カイロプラクティックの学校に行っていた時もワークアウトは続けていたんだ。でも、誰かと闘うのは1994年に辞めた。学校を卒業して、時間がなくなってしまったからね。やってみたいと思うかって? やってみたい気持ちはあるけど、僕が情熱を持っていることは闘うことじゃないんだよ。
もし本当にファイターになりたいのなら、その人は全ての時間をそのために捧げなければいけない。大部分の人は、そのことを理解していないけどね。チームクエストでは、みんな1日に2回はトレーニングをしている。もし1日に2回もトレーニングしたら、他には何もする時間がないはずなんだよ。だって、それ以上はご飯を食べたり、寝たりという、まさに必要最低限のことしか出来ないからさ。来る日も来る日も、その繰り返しの生活だからね」