<出席者>(写真左から)
「格闘技通信」田中宏和
「ゴング格闘技」安村将史
広報局局長 笹原圭一
司会/「GBR」熊久保英幸
「kamipro」ジャン斉藤
――今回はPRIDEオフィシャルサイト緊急座談会ということで、「今のPRIDEに必要なものは何か」を各専門誌の代表者の方々に話し合っていただきたいと思います。まず最初にお聞きしたいのは、今回のフジテレビPRIDE放送中止というニュースに関して、各誌はどう捕えているのか、です。
ゴング格闘技・安村(以下、ゴン格)専門誌のスタンスとしては、ファイターのリング上での闘いが全てなので、格闘技の良さ、格闘家の声を読者に伝えるスタンスを貫き通していきたいと思います。社会の一員として法に触れるような事実があれば、正されるべきだと思いますが、見るべきものはリング上での闘いであって、今後もコンセプトは変えず、選手の技術やインタビューをクローズアップしながら報道していきます。
笹原 スキャンダラスなニュースに走らず、イベントの本質である「闘うこと」を変わらず報道していくということですね。
格闘技通信・田中(以下、格通)全部言われてしまいました(笑)。僕らもそうなんですけど、どこまで今回の件に関して本当のことが分かるかって言ったら、実際僕らにはリング以外のことは分からないじゃないですか。読者をはじめファンの方々の「いまPRIDEが必要なのかどうか」っていう声を集めていったら、「PRIDEが見たい、必要だ」という声がやっぱり圧倒的に多かったんですね。分からないことを分かった振りして勝手に書くのは一番ズルいし、よくない。取材して自分の目で見て、分かったことを伝えていく。本人の前で言えることだけを書く。それは今までのスタンスと変わらないですよね。
kamipro・斉藤(以下、kamipro)え〜、全部言われてしまいました!! ウチも皆さんと同じです……と胸を張りたいところなんですが。ちょっと前に、ある公判の資料になったりしてますからね(笑)。今回の騒動に関して言えば、疑惑の告発者自体が“反社会勢力”なんじゃないの? って最近になって某・一般週刊誌が報じましたけど、それ自体の信憑性はともかくそういう疑惑は前からあったりしたから、慎重にならざるをえないところはありましたよね。事態は司法の場に委ねられるという話ですから、そこで白黒ハッキリつけてくれ!!
というしかないんですけど。とりあえず今回の事件をもとにいろんな噂が書き立てられる中で、マット界がどう動いていくのか、PRIDEはこれまでの面白さを維持するのか、それとも悪い意味で変質してしまうのか? 今後の行方には俄然、興味がありますね。あと最近のkamiproで音楽家の菊池成孔さんが、大雑把に言えば「帝国の傾斜、再生」というテーマで今回の騒動を語ってるんですけど。やはりここまで大きくなったPRIDEに危機が訪れたことで、あらためてPRIDEとは何か? を考える機会でもあると思います。
――地上波がなくなったメリットとデメリットについてはどう思いますか?
kamipro う〜ん。突然に打ち切られたショックの方が大きいし、その理由も明かされていない。漠然とした不安があるのでファンもそこまで考えられないというか、そもそもメリットなんてあるんですかね。
――単純に、PPVの価値が高まると考えられますよね。kamipro PPVの価値を高めることを狙っての前向きの選択なら、そうなんでしょうけど……。
笹原 地上波がなくなるのでPPVの数字が上がるというのは当然考えられますね。ただ、今までは地上波をプロモーションとして位置付け、大会をアピールしてきた部分は非常に大きいですから、それがなくなってどうしていくのかは、慎重に考えなくてはいけないでしょう。まあでも地上波のゴールデンタイムで放送されるようになったのは2003年からで、あまり時間も経っていないんですよね。昔からやってきた感じがするけれど、歴史もそんなにないんです。
kamipro 2003年のミドル級GPからゴールデンタイムでやることによって、それ以前とどう変わっていったと肌で感じますか?
笹原 地上波の放映権料は決して小さくはないですが、フジテレビの放映権料だけで全てイベントが成り立っていたかといえば、そうではありませんから。それは榊原が会見で言ったとおりです。それに地上波を今までのようにやり続けたとしても、いずれどこかで方向性を変えなくてはならない時が来たような気がします。というのは、地上波はプロモーションの一部だと捉えていた部分がありますが、テレビの影響ってやはり大きいじゃないですか。地上波の意向、いわゆる不特定多数の視聴者の好みをイベントに加味しないといけないので、どこかで本来PRIDEの持っている世界観と離れていくんじゃないかな、という危惧は少なからずありました。そういう意味で今回の件は能動的ではないにせよ、もう一度足元を見つめ直すという意味では、意義のあることと捉えたいですね。
kamipro 原点回帰として捉えているところはあるわけですね。
格通 タイミング的にはどうでしたか?
笹原 唐突でしたからね。事前に「この日からなくなりますよ」ということであれば、それに向けて当然仕事の流れだとか、プロモーションの仕方だとかを徐々に変えていけるじゃないですか。それが全くなくいきなりだったので、戸惑っているっていう部分はありますね。
kamipro ファンが心配しているのは、フジテレビが制作していたPRIDEのウリのひとつである、煽り映像などはどうするのかだと思うんですが。
笹原 ファンもそこは心配な部分ではあると思いますが、クオリティを落とさない方法はいくらでもあるので、安心していてください。
kamipro そうですか。ボクは、PRIDEでバージンを……じゃなくて、デビューする中尾“KISS”芳広さんをちゃんと紹介してくれるのかが心配で、心配で……
――(無視して)榊原代表は常日頃から「地上波に頼ったソフト創りはしない」って言われてましたよね? 地上波の意向に沿ってルールを変えたりはしない、とか。「地上波で100%ウケるソフトになってしまった時点でダメになると私は思っているんですよ。ハードコアな人たちが熱狂できるものでいいと思っているんです」とオフィシャルサイトのインタビューでも答えていました。笹原 そうですね。思想的には間違いなく、最初から変わらず思い続けてきたことですね。榊原は元々テレビ局にいた人間なので、テレビの怖さを知ってるんですよ。いい時は凄く持ち上げるけど、人気が落ちた途端にそっぽを向きますから。これは良い悪いではなく、メディアの特性としてしょうがない部分はありますよね。
kamipro 『PRIDE.6』からフジテレビ主催でやってきたわけなんですが、バックアップがない不安はないですか?
笹原 「不安」はありませんが、あまりにも突然だったので「とまどい」はあります。フジテレビの現場のスタッフと我々で今のPRIDEの世界観を創ってきたので、一緒に仕事が出来ない寂しさはありますが、まあ下を向いていてもしょうがないですからね。
格通 実況席がどういう陣容になるのか気になりますよね。
kamipro そういえば、『PRIDE.1』は一試合ごとにゲストが変わったりしてましたよね。秒殺で終わった試合は何もしゃべれずに終わったこともあったり、たしかプロレス評論家のターザン山本!さんも出てましたけど……この原点回帰は見たいような、見たくないような。いや、やっぱり見たくない(笑)。
笹原 すでに内定はしています。全試合を一人で実況するのは辛いので、何人かに頼んでいるところですね。
――地上波中継がなくなったことに対しての、格通さんの読者の反応はどうですか?格通 読者からの声で一番多いのが、地方在住の方で、しかも若くて借家だからアンテナが付けられない、まだ子供なのでそういう設備、あるいは番組を買ってもらえないからPPVが見られないとか、そういう声が多いですよね。どうすればいいんですか? っていう声が。地方の方だとなかなか会場へ観には行けないし、PPVで観ることも難しいとなると、インターネットやモバイルなどで結果速報は見られますが、動画ではないじゃないですか。テレビに慣れすぎるとイメージっていうのが沸きづらい部分もあると思うんですよ。(今年5月の)GP開幕戦って、ある意味、予告編じゃないですか。これからさらに面白くなっていくのに、その触りだけ見て、その後の結末が見られないっていうのはストレスが溜まるんだろうなと思います。
――インターネットでのオンデマンド放送という手段は考えていませんか?kamipro 『ハッスル』はGyaoでやってますよね。
笹原 方法としてはありですね。ただインターネットでの放送は当然視野に入っていますけれど、スカパー!との兼ね合いで制約もありますから、簡単ではありません。正直言って、うちは高いですよ(笑)。
――なんで急に強気になるんですか!?
笹原 安売りするのはもったいないじゃないですか。それにネットで流れているのはテレビ以上に世界中で見れちゃうんですから、映像価値っていうのは広まれば広まるほどプロモーションになる反面、映像価値は落ちていく。だからそこは慎重にやらないといけない。
――DVD制作もフジテレビでやっていましたよね? 今後は出ないってことですか?笹原 現時点では、フジテレビから発売されることはないでしょうね。
――自主制作はどうですか?笹原 そういった手段をとらなくても、やりたいところはいくらでもあると思うんですよ。だって現在地上波放送がないわけですから、大きなビジネスチャンスじゃないですか! DVDも今後発売されていきますから、安心してください。