PRIDE史上初のライト級メインイベンターとなった五味。この歴史的な一日を前に、五味はまだ設営中の会場を一回りした。「あの会場を見たら、いろんな行事の疲れも吹っ飛んだ。今までで一番凄い。綺麗だし、客席が両側に回っていて…あそこで試合をするのが凄く楽しみです」と言う五味。場は人を変えるというが、今の五味には間違いなくメインイベンターとしての風格が漂っている。「相手のレベルなんか関係ない。これは自分自身がメインで通用する人間かを試すための勝負。最後の試合で気持ちよくなって、お客さんを帰すことが出来るかです」とプロ意識も高い。
その五味が、表情を変えたのはファンクラブへのプレゼントとする全選手のサインが入ったポスターを見た時だ。五味の写真の上に、“KRAZY HORSE”のサインが踊っていたのである。マジックインキ(太字)がベッタリと覆った自分の写真を見て、五味の怒りに火がついた。「こういう事をするやつは許せない。救急車を用意したほうがいいかもよ」。
そんな事を知らないベネットは、金歯を見せながら、陽気に振舞っていた。「PRIDEには前から参戦したかったんだ。何しろ世界で最も有名な大会だし、ビッグマネーは手に入るし、美しい女性と出会えるチャンスはあるし、俺に必要なものが全て手に入るからな!」と豪語する。さらには五味を“ゴミ”扱いし、「PRIDEのリング上にはゴミがいっぱい落ちてるから、それをさっさと片付けてホテルへ帰って寝るさ」と五味を挑発。「エキサイティングで、クレイジーな、ファンを喜ばせる試合をするよ。俺のクレイジーはちょっと違うぜ。CRAZYじゃなくKRAZYなんだ!だって、こっちのほうがキュートだろ!」と最後までハイテンションだった。
だが、彼はもう一つ知らない事があった。それは、元々、五味も“狂犬”と呼ばれる危険なファイターである事をだ…。
入場式、前日の元気はどこへやらベネットはちょっとおどおどとしながらの登場。初の大会場での試合に気圧されているのだろうか。五味もまた、気合いの入った表情だが、フーッと大きく息を吐く。まるで落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせているようだった。