PRIDE.31
2006.02.26 さいたまスーパーアリーナ
PRIDE
第9試合1R10分、2・3R5分
3R 1分18秒 TKO(スタンドでのパンチ)
和製ヘビー級ボクサーとして日本中の話題を集めた西島洋介が、いよいよPRIDEでデビュー戦を行う。今回の試合に備えて西島は、ミルコのチーム・クロコップ、マット・ヒュームのAMC、オランダの名匠ルシアン・カルビンのジムと海外武者修行を繰り返した。オランダではヒョードルとも接触したという。
「僕は95kgくらいですが、ハントとの体の大きさの違いはあまり関係ありません。ハントのパンチはとても威力があるし、体重差も関係してくるとは思いますが、思い切りやるだけです」と、西島は静かに語る。「デビュー戦までの練習期間は長かったような短かったような……でも、悔いはありません。試合をする準備まで出来ています。パンチが当たれば倒せる自信はあります。僕の試合ではただパンチを振り回すのではない、ボクシングのテクニックを見てください」と、虚勢を張る人間ではないためその言葉には真実味がある。
 ハントはこれまで3度しかダウンを喫した事がない。いずれもK-1王者になった後の事で、慢心がその原因ではないかと言われている。無差別級GPへ向けてモチベーションを高めているこの時期、同じ過ちを繰り返すとは思えないが……西島の言うとおり、ボクシングの正確に相手の急所をピンポイントで打ち抜く技術があれば、体重差を殺す事が出来るに違いない。
 予想は西島不利。しかし、ボクシングのヘビー級という日本人にとって未知なる領域に踏み込み、敢然と立ち向かって行きついには世界のベルトを手にした西島である。PRIDEのリングでも不可能を可能にするかもしれない、との期待が高まる。“シンデレラマン”となる事が出来るか!?
 まず最初に西島が入場。フードを頭からすっぽり被り、ゆっくりとリングへ歩を進める。「夢を掴め」西島の日本語の入場曲の歌詞が、悲壮感溢れる佇まいの西島にそう呼びかけた。ハントは対照的に明るいテンポの入場曲で、笑顔を浮かべながらリングイン。四点ポジションでのヒザ蹴りは西島が認めた。リング中央で顔を合わせた両雄だが、目は合わせない。

第8試合1R10分、2・3R5分
1R 49秒 TKO(肘の脱臼)
新旧GP王者対決が実現! 昨年のミドル級GPを圧倒的な強さで勝ち上がったショーグンがヘビー級の壁に挑むのだ。GPの激闘から一時は練習を再開することも困難だったというショーグンだが、十分な休養はショーグンに闘うモチベーションを取り戻させた。そもそもショーグンは普段から100kg近い体重で、シュート・ボクセにはヘビー級選手も豊富。シウバやニンジャなど、過去にヘビー級選手と闘ったメンバーもおり、ショーグンにとって無差別級戦は決して高すぎるハードルではない。レスラーのコールマンからタックルを奪わなければ、得意のサッカーボールキックも踏みつけも出来ないのだが、「だったらテイクダウンする前にヒザ蹴りでKOするよ」と余裕の表情。来日以来、ずっとリラックスした様子のショーグンは、体重同様に普段通りのナチュラルな状態だ。「普通は体の大きな選手とは闘いたがる選手はいないけど、それがシュート・ボクセのスピリットであり、アカデミーでずっと教えられてるものなんだよ。無差別級戦に必要なものは勇気はアカデミーのメンバーなら誰もが持っている」とショーグン。シュート・ボクセ魂を胸にでリングに上がることだろう。
 一方のコールマンは、この試合に向けて減量を敢行、100kg前後まで体重を絞った。「私も昔は体重が重い方がいいと思っていたんだけど、それが間違いだということに気づいたんだ。実際、体重を減らしたことで、力はそのままにスピードが増した」という。「ショーグンと比べても自分が劣っているとは思わない。とにかく試合ではアグレッシブなところを見せて戦う。ショーグンの顔面にパンチを叩き込んで、彼とファンのリスペクトを勝ち取ってやる」と意気込むコールマン。勢いに乗るショーグンを倒し、初代無差別級男の面目躍如なるか。試合の鍵はどの段階でコールマンがショーグンをテイクダウンするか、だ。
 コールマンは大きな雄たけびを上げ、興奮気味な表情で花道を歩く。リングに入っても叫び続け、すでに戦闘態勢だ。対するショーグンは余裕の笑顔。兄のニンジャに背中を押され、リングへ上がった。

第7試合1R10分、2・3R5分
1R 2分24秒 アームバー
6年ぶりの再会ーーかつて両者はリングスのトーナメントで対戦経験がある。その時は、田村が1回戦をフルタイム闘って判定勝ち、ノゲイラは3分足らずで一本勝ちを収め、2回戦で激突した。体重差がありながらも田村は善戦したが、ついに力尽き、2R2分29秒に腕十字で敗れている。
 今回の対戦は、田村自身が望んだものだという。「もう一度、彼と闘いたかった」という強い思いは、「田村は勇敢な戦士だ。僕より体重が軽いのに、また僕と対戦したいと申し出てくれたという。だから僕は、彼にリベンジの機会を与える事にしたんだ。敬意と尊敬の念を持って、彼の挑戦を受け入れる」とノゲイラの心を動かした。
 田村は「勝ちたい、ではなく勝つ」と強い決意を持って試合に臨む。この時期に自ら再戦を申し込み、そこまで言うという事は勝利への確信があるからだろう。初対戦の直後、田村は「楽しかったし、嬉しかった」と試合を振り返っている。「彼とは何度でも闘ってみたい」と。あれから6年、田村はじっと待ち続けていたのだろう。再戦の機会を、リベンジの時を。そして今こそが、その時だと判断したのではないか?
 ノゲイラは長年患っていた両肘の負傷を治すため手術に踏み切り、今回が約8ヵ月ぶりの復帰戦。手術をしたのは無差別級GP制覇、そして宿敵ヒョードル戦へ向けてどんな小さな不安要素も取り除くためだ。ノゲイラにとっては、今回の田村戦はGPへ向けての調整試合的な要素でしかない。
 赤いパンツの頑固者の執念がヘビー級という岩をも砕くか、それともノゲイラが返り討ちにするのか? 6年ぶりの邂逅で待っているのは、栄光か決定的な挫折か? 
 四点ポジションでのヒザ蹴りは、田村が拒否したため無し。グラウンドでは純粋な寝技の勝負となりそうだ。
 エレベーターに乗って下りてくる田村は硬く目を瞑り、手には“本当の命を賭けた勝負”の時にしか手にしないお守り・小太刀が握られている。田村が小太刀を持つのは、実に高田延彦との試合以来である。リング中央に立ち、リング四方へ向かって深々とお辞儀をする田村に大歓声が沸き起こり、最後には赤コーナーを睨みつけた。
 ノゲイラは左拳を突き上げ、シャドーボクシングをしながらの入場。落ち着いた表情だ。リング下に来るとリング上を見上げるノゲイラ、その視線の先には田村がいる。

第6試合1R10分、2・3R5分
1R 8分10秒 スリーパーホールド
対戦カード発表会見では、いつになく神妙な面持ちで、「五体満足でリングから降りられないかもしれない」と口にしていた中村。過去、練習でボコボコにされたことがトラウマになっているのか? それとも無差別級戦の恐怖を感じているのか? 試合が近づいても「どうですかね…」「難しいんじゃないですか…」と、弱気なコメントを繰り返すばかりだ。しかし中村は何もせずに今日を迎えたわけではない。「ただ何となく」と理由を語らなかったものの、日体大のレスリング部に出稽古に行き、スタンドレスリングの向上を図り、ボクシングジムでの練習を増やしヘビー級ファイターとスパーリングを重ねた。「今はこんなこと言ってますけど、リングに上がれば思い切りのいい試合をしますから」と中村。すべては今日のリング上で明らかになる。
「とにかくあの試合でのパフォーマンスは酷かった。今までの格闘技人生の中で最悪の試合だったよ」2度目のミルコ戦をジョシュはそう振り返った。「プロである以上、どんな体調でも試合をしなければいけない」というプロレスラー魂でミルコと闘ったジョシュだったが、一年近い欠場を余儀なくされた肩の負傷の影響は大きく、コンディションは100%ではなかったようだ。しかし今回のジョシュは違う。体重はさらに15kgも絞り込まれ、Tシャツを脱ぐとうっすら腹筋も割れている。「この試合が俺にとってはスターティングオーバーとなる。そして俺の復活ロードにおいて、ナカムラが何の問題もないことを証明してみせる」とジョシュ。宣言通り、カズをスープレックスで投げ捨てるのか?
 胸に手を当てて入場する中村、セコンドには吉田秀彦、小野寺力、長南亮が付く。ジョシュは前回同様、『北斗の拳』のテーマで入場する。リング上で二人が対峙すると、身長含め一回り以上ジョシュの方が大きい。中村はシューズを着用して試合に臨む。

第5試合1R10分、2・3R5分
1R 5分13秒 TKO(グラウンドでの膝蹴り)
ヘビー級トップファイターVSミドル級トップファイターの“無差別級戦”、その先鋒戦がいよいよ始まる。ミドル級ファイターがそのスピードとテクニック、機敏性を活かしてヘビー級のパワーと体格を攻略できるのか?
「大きい方が有利? それは選手によりけりだね。体格差でアドバンテージをとって有利に使う選手もいれば、不利になる場合もある。一概に有利不利とは言えないよ」と語るのはミドル級GPベスト4のアリスター。今回の試合に備えて3kg増量し、調子はいいという。ハリトーノフのボクシング技術は認めながらも、「でも、当てるのは僕だ。だって、僕はオランダから来たんだぞ」と“打撃系格闘技王国”オランダのプライドにかけても、打撃では負けないと豪語。「ヒザも当てて行く。アグレッシブに打撃を出す」と言い、もう一つの得意技「ギロチンチョークを極める事にも期待して欲しい」と、ハリトーノフ殺しを予告する。
 しかし、ハリトーノフは決してミドル級ファイターを甘く見ているわけではなかった。「100kg以上の者同士の試合では、体重差は影響してくるだろう。しかし、今回のようなケースでは軽い方が動きが速く、重い方はスピードで劣るという見方も出来るからね。今回の私の試合では、普段闘っているのがミドル級とヘビー級だからヘビー級の方が有利、とは言えないと思うよ」と、ライオンはウサギをも全力で倒す構えだ。
「あらゆる彼の得意技が危険だと思う」と警戒を強め、「ヒザ蹴り対策はいくつか考えてきたよ。もちろん、彼の技が自分には当たらないという確信はある。彼の攻撃をもらわずに、自分の技を出して行きたいと思っている」と、万全を期している。
 戦前の予想では、ミドル級のドリーマーズが圧倒的に不利。だが、打倒ヘビー級を果たすとすれば一発の武器を持っているアリスターとショーグンだと見られている。無差別級GPへ向けて、ミドル級ファイターたちは夢を繋ぐ事が出来るか?
 トレードマークのハンマーを今回は持たずにアリスターが登場。時折、笑顔を浮かべてファンが差し出す手にタッチしながら入場する。ハリトーノフはいつも通り迷彩服にロシア軍のベレー帽、ステップを刻み、シャドーボクシングをしながらリングへ向かった。リングサイドではヒョードルがなぜか笑みを浮かべている。

第4試合1R10分、2・3R5分
1R 1分20秒 KO(スタンドでのパンチ)
「殺しに行くという気持ちは一緒です。自分の中にいる敵を倒します」試合直前のインタビュー、高阪の覚悟は変わっていなかった。対戦カード決定会見の場では、「格闘技人生を賭けて戦う」と悲壮な決意を語った高阪。マリオ戦に向け、技術的な部分はもちろん、精神的に格闘家としての原点を思い出すようなトレーニングを積んできた。ヨネクラボクシングジムで、貪欲に上を目指すボクサーたちに刺激を受け「格闘技が本来どういうものかを再確認するための練習だった。電気を入れてもらった」という。対戦相手のマリオに関する研究はゼロ、「リングに上がった自分に任せる。素の状態で闘うんじゃないですかね」(高阪)。高阪はリング上で闘いだけでなく、自分の生き様を見せるつもりだ。
 ここ最近は判定に泣かされることの多かったBTT。チームを束ねるマリオも「寝技で一本取るためには、ある程度の時間が必要なんだけど、今のルールではその時間が与えられない。もっとアグレッシブに闘わなければならないと感じたんだ」と語る。そしてチームを挙げてキックボクシング、ボクシングの練習に取り組んだという。生まれ変わったマリオ、BTTの戦いぶりはいかに。
 VTRで格闘技界の人格者同士の一戦と紹介されたこの試合。先に入場するスペーヒーはリズミカルな落ち着いた曲でゆっくりとリングイン。まさに紹介VTRのイメージそのままだ。高阪は目を閉じて拳を合わせ、チーム・アライアンスの宮川、渡辺、そしてパンクラスの高橋義生を引き連れて入場する。高阪はいつものスパッツではなく、キックパンツで試合に臨む。

第3試合1R10分、2・3R5分
3R 終了 判定 3-0
格闘技マニアの圧倒的な支持を受け、ついに北欧の巨人がPRIDEデビューを果たす。柔術を初めて僅か数年で柔術世界選手権ムンジアルの青帯無差別級を制し、“寝技世界一決定戦”ADCCでは優勝を始め常に上位入賞。正真正銘、本物の世界トップ・グラップラーである。
「凄く長い間、PRIDEに出たいと思っていたからとても興奮している」と気合満点のエイネモは、PRIDEデビュー戦に備えてオーストラリアに渡り、マーク・ハントと共に練習を積んできた。「ハントとの練習で何%くらいスキルがアップしたかって? 2000%アップだよ!」と自信を覗かせるエイネモ。「KOか一本でフィニッシュし、面白い試合、動きのあるいい試合をしたいと思っている」と語り、無差別級GPへの進出を狙っている。
 ファブリシオもまた、「試合が楽しみだよ」と不敵に笑う。今回はチーム・クロコップでの練習に加え、ブラジルへ戻って兄たちとベースである柔術にさらに磨きをかけた。「アブダビなどで見たエイネモのグラウンド・テクニックはとても危険なものだった。関節技を極めに行く、アグレッシブな柔術をする選手だから、僕との試合はアグレッシブでいい試合になると思う」と警戒を強めているが、「今回はもっとアグレッシブに攻めるファブリシオをファンは見られる事になると思うよ」と、ハリトーノフ戦の敗北を糧にニュー・ファブリシオを見せるという。
 PRIDEで実現した究極の寝業師対決、寝技世界最強の称号を手にするのはエイネモか、ファブリシオか!?
 赤い道衣に身を包み、ファブリシオが貫禄たっぷりの余裕ある佇まいでの入場。右胸には「CROCOP TEAM」の文字が刺繍されている。リングに上がると右手を大きく上げて、ファンの歓声に応える。続いてエイネモは両拳を突き上げ、満面の笑みを浮かべて登場。客席に向かってガッツポーズを作るなど、デビュー戦の緊張感を全く感じさせない。

第2試合1R10分、2・3R5分
3R 終了 判定 3-0
ミドル級GPでの屈辱から半年、練習環境を一新し、横井戦に挑んだジャクソン。テクニックが向上しただけでなく、かつての荒々しさを取り戻し、狂犬復活を印象付けた。今回の対戦相手であるドンシクについて、ジャクソンは「柔道はナイフや銃を使わない競技だってことは知っている」とはぐらかす。しかしその一方で「レスリングと柔道ではレスリングの方が上。レスリングは世界最古のスポーツで、聖書に出てくる唯一のスポーツなんだぜ。レスラーの俺が柔道技を恐れることはない」と強気なコメントを残すジャクソン。柔道家ユンをスラムで破壊するか?
 対するユンは総合デビュー以来連敗が続いているものの、確実に総合格闘家としての成長の跡を見せている。桜庭戦前のビッグマウスはどこへやら、高田道場で入門し厳しいトレーニングを自らに課し、ジャクソン戦に向けてあのマット・ヒュームの下で武者修行を行った。ジョシュやUFCファイターたちを相手に連日スパーリングを重ね、「打撃だけでなく寝技でもレベルアップしました」とユン。「今回はとにかく勝ちたいという気持ちが強い」と、勝利に飢えた柔道王が狂犬狩りに挑む。
 白い柔道着に身を包み、やや緊張した面持ちでリングへ上がったドンシク。ジャクソンはカメラを睨み付けながら一歩一歩花道を歩く。桜庭もリング下でこの一戦を見つめる。

第1試合1R10分、2・3R5分
25秒 KO(スタンドでのパンチ)
UFCヘビー級トップファイターとして長く君臨し、最強のストライカーと呼ばれたヒーゾ。そんなヒーゾでさえ、PRIDEトップの厚い壁の前には無残に砕け散った。大きな期待を集めて行ったPRIDEデビュー戦、ヒーゾはハリトーノフに自分が得意とするヒザ蹴りで秒殺KO負けを喫したのである。
「実は……前回のハリトーノフ戦では、深刻な怪我を負っていたんだ。足が炎症を起こしていて、試合には痛み止めを飲んで臨んでいたんだよ。試合をするかどうかも悩んだんだが、初めてのPRIDEでの試合だし、プロとして闘わねばならないと決意し、試合をする事にしたんだ。しかし、100%のコンディションではなかったから、自分の実力の半分も出せなかった。実際、その負傷のため試合へ向けての練習は3週間しか出来なかったんだ」
 今回の来日で初めて明かした敗戦の真相である。そしてヒーゾは悔しさをバネに、さらなる練習を積んで今回の試合に賭けるという。
 一方のゼンツォフもまた、PRIDEのレベルの高さを初戦で思い知らされた。ヒョードルが最も信頼するスパーリング・パートナーとして、皇帝の推薦を受けて参戦するもファブリシオに僅か4分で一本負け。だがその後、さらなる練習を積んで昨年11月にはミルコと闘った事もあるイブラヒム・マゴメドフをKOし、ロシアM-1のヘビー級王座に就いた。
 PRIDEでの生き残りを賭けて、ブラジルVSロシア宿命の対決のゴングが鳴る!
 荘厳な響きのテーマ曲でゼンツォフが入場、リングサイドでは皇帝ヒョードルが見守っている。ヒーゾは師匠のマルコ・ファスを伴って、ゆっくりゆっくりと体を揺さぶりながらリングへ歩を進める。トップロープを跨ぎ、リングイン!
大会名称PRIDE.31
開催日2006年02月26日
会 場さいたまスーパーアリーナ