PRIDE 武士道 -其の拾-
2006.04.02 有明コロシアム
PRIDE
第11試合1R10分、2R5分
1R 4分34秒 肩固め
 ついに迎えたライト級最強王者・五味隆典始動の日。大会二日前、五味は驚くべき事実をオフィシャルHPのインタビューで答えた。「正直言って僕は今回、寝技の練習を一切やっていませんから。なぜかやる気にならなかったんですね。打撃とウェイトしかやってないです。それも面白いんじゃないかという試みでもあります」。なんと、寝技を得意とするアウレリオに対して、寝技対策を全くやらなかったという。
 まるで相手にハンディを与えるかのようなこの行為。果たして、吉と出るか凶と出るか?
 一方のアウレリオは、「五味との試合は待ちに待った試合だ」とモチベーションが高い。「今回の試合が自分にとって特別な試合だという意識はある。彼はナンバーワンだし、俺がPRIDEに上がり続けるためには必ず五味を倒さなければならない。ホイラー・グレイシーと闘った試合よりも、特別な一戦となるだろう。それこそ、俺にとって人生最大の大一番だと思う」と、五味とは対照的にこの一戦を捉えている。
 ライト級王座を手にし、マッハと最高の作品を創り上げてモチベーションの低下も叫ばれる五味。このアウレリオとのモチベーションの差が、どう試合に現れるのか? それとも、五味が圧倒的な差を見せ付けて“最強王者”を証明するのか? 2006年の一発目、五味隆典、闘いの舞台の幕が開く!
 アウレリオはATTと書かれた黒いマスクを被っての入場、後ろからはアメリカン&ブラジリアン・トップチームの面々がぞろぞろと列を作って続く。ATTの旗が閃いている。続いて五味がゴールドとシルバー二本のベルトを肩に下げての登場! 大歓声が沸き起こり、その中を五味はゆっくりと歩を進める。五味はいつものように、相手と向かい合っても目を合わせない。

第10試合1R10分、2R5分
2R終了 判定 3-0
 ウェルター級王者ヘンダーソンとの一戦を前にしても、三崎は平常心のままだ。試合前の公開練習やインタビューで、常々「強い相手ではあるが、決して勝てない相手ではない」と口にしてきた。1年間かけてウェルター級で闘う体を作り上げ、小路戦では冷静に闘う一面も見せ、自然体で闘う新たな強さを見につけた。GRABAKAのボス菊田早苗は「五分五分の勝負になる」とし、郷野にいたっては「もしこの勝負に金を賭けるんだったら、和雄に賭ける」とまで言う。「相手どうこうではなく、自分がベストコンディションで闘うことが重要」と三崎。あくまで己を磨くことで打倒ダンに挑む。
 一方のダンはウェルター級のベルトを奪取し、自らのジムをオープンするなど、練習環境を整えた。ベルトが正式なタイトル化し、基本的にはウェルター級での戦いが主となっていくのだが、ダン自身はヴァンダレイ・シウバや桜庭和志との対戦を希望するなど、無差別級・ミドル級志向の方が強いというのが事実。このまま“勝ち逃げ”させないためにも、三崎はダンを止めることが出来るのか?
 両手を振り回して、入場曲に体を揺らして花道を歩く三崎。ダンは帽子にTシャツ姿、一歩一歩花道を歩き静かにリングへと向かった。

第9試合1R10分、2R5分
1R 2分23秒 TKO(グラウンドでの膝蹴り)
 身長差55cm、体重差約100kg(シルバ180kg、美濃輪87.4kg)という巨大な体格差。この圧倒的なサイズの違いに、無差別級GP出場を標榜している美濃輪はどう対抗するのか?
「イメージの中ではすでに何回か闘っています」という美濃輪。シルバが疲れるまで動き回るのかと思いきや、「相手が疲れるまで逃げ回ろうとすれば、僕が疲れてしまうので、逃げるという闘い方はしないと思います。真っ向勝負です」と、正面からこの巨大な壁にぶつかっていく事を宣言した。
 秘策は「“柔よく剛を制す”です。この言葉の意味をずっと考えていたんですけれど、分かりやすくいうと“柔よく剛を制すタイミングがある”という意味だったんですね。そこを狙う」というもの。まさに、一瞬も見逃せない試合となるだろう。
 一方のシルバは「美濃輪は私の脚を折りに来ると思う」と、美濃輪が足関節技を仕掛けてくると予想している。さらに言うならば、脚を折られる事を恐れているようにも感じられた。「おそらくすばしっこく動くとは思うが、遅かれ早かれ突っ込んでくると思う。それを私は待ち続けたい。美濃輪は私の腕や脚を折りに来ると思うが、その時に試合を決めたいと思っている」とシルバ。我慢強く美濃輪が懐に入ってくるのを待つという作戦だ。
 史上最大級の体重無差別戦、一体どんな結末が待ち受けているのか……?
“天国に最も一番近い男”シルバが巨体をユッサユッサと揺らしながらの登場。続いて、会場の空気が一変する。赤パンツ一丁で美濃輪が入場だ! 入場テーマのブレイクに合わせてアクションをとり、まるで振り付けのよう。美濃輪の一挙手一投足に場内が沸く。トップロープをヒラリと飛び越え、リングイン! 美濃輪は足踏みをするようにシルバを見上げる。

第8試合1R10分、2R5分
1R 25秒 KO(スタンドでのパンチ)
 五味の王座戴冠後初の試合、ヘンダーソンと三崎の一戦など見所の多い今大会。しかし近藤有己のウェルター級転向を最も楽しみにしているファンも多いことだろう。そしてウェルター級で闘うことを誰よりも楽しみにしているのが近藤本人だ。プロデビュー以来初となる減量を試みた近藤。食べることが趣味というだけあって、予想以上に減量には苦戦したものの「体重が落としたことで感覚が研ぎ澄まされている。動きに躍動感が出てるんです」と語る。減量の影響で昨年から継続しているSAQトレーニングの効果も現れ始め、「とにかく試合が楽しみですね」と目を輝かせる。さらに最近はご無沙汰となっている飛びヒザ蹴りにも“斬鉄剣”なる名前が付けられ、「特に出そうとは思ってないんですけど、これだけ調子が良いんだったら自然に出ると思いますよ」と頼もしいコメント。さらに今回は“一徹”という右フックもあるという。新生・近藤有己を堪能せよ!
 対するバローニは今回毒舌を封印。バローニは7,8年も前から近藤の闘いを見て、ずっとリスペクトしてきたのだという。しかし対戦相手に噛み付く以外のビッグマウスは健在だ。「これはウェルター級のトップ2の対決だ。勝った方がウェルター級のトップだぜ!」「近藤には美濃輪のような足にしがみつく女々しいファイトはしないで欲しい。殴り合おうぜ!」と叫んだ。
 バローニはド派手な真っ赤なガウンで登場。入場曲に合わせて体を揺らし、コールマンと共に入場。対照的に近藤は紺のガウンを着込み、落ち着いた表情でリングへと向かった。

第7試合
1R 9分00秒 アームバー
 ウェルター級で“世界に最も近い男”郷野がPRIDEのリングに帰って来た。しかも、これまでのスタイルであった「判定上等」はやめて、「もっとお客さんが楽しめるファイトを見せる」と大きく考え方が変わっている。
「俺の拘りの部分で開けられなかった引き出しがあるから、そういうのを開けていけば面白いんじゃないかって思うんだよね。そうすればもっと動きが出ると思うし、凝り固まったスタイルよりも勝つ確率が高くなるんじゃないかって思うようになったんだよ」と郷野。元々、寝技の強さには定評があり、打投極のバランスがとれたトータルファイターである。
 開けていなかった引き出しを開ける事によって、郷野のファイトスタイルはどう変わるのか? 実に楽しみである。
 一方のキムは韓国柔道界の“天才児”とも呼ばれたほどの選手。総合格闘技に転向してからは、テイクダウンからのパウンドを得意としている。「打撃からテイクダウンに持ち込んで自分のスタイルを貫き通したい」と郷野のボクシングに付き合うつもりは全くない。今回の試合で名を挙げて、韓国でも絶大な人気を誇るPRIDEへの継続参戦を狙っている。
 髪の毛の中央だけを金髪に染め上げ、キムはパンチを繰り出しながらやや緊張気味に入場。スパッツには韓国の国旗があしらわれている。郷野はニューガウンに身を包み、リングに上がるとガッツポーズ。

第6試合1R10分、2R5分
2R終了 判定 3-0
 裏ウェルター級GP決勝戦、そう言っても過言ではない。ミドル級無敗でミドル級GPでも優勝候補に挙げられるフィリオ。一部ではシウバやショーグンよりも完成度が高いと評価されるニンジャ。ヘンダーソンやブスタマンチをも凌駕する実力の持ち主同士である。この一戦の重さについてフィリオは「この試合がウェルター級最強を決める試合かどうかは分からない。ただしこの試合の勝者がウェルター級における強さを証明する試合にはなるだろう」と形容している。
 共にミドル級からの転向組であるが、ここで注目すべきはフィリオが転向2戦目であることに対し、ニンジャが転向初戦であることだ。「フィジカルトレーナーと共に練習メニューを組んで、体力や筋力を落とさないように減量したんだ。だから問題はないよ」と語るニンジャ。頬もこけ筋肉のカットが見えるほどグッドシェイプではあるものの、逆に無理な減量をしたんではないか、とも勘ぐってしまう。そしてそれを最も意識しているのが、対戦相手のフィリオだ。「自分もそうだったんだけど、減量して最初の試合というものは色々と難しいんだ。体重の落とし方もそうだし、実際に試合でどれだけ動けるのかも不安なものなんだ。ニンジャは試合でそれを感じることになるだろうね」と不敵な笑みを浮かべる。技術的な部分ではオールラウンダーであり、総力戦になることは必至。コンディションという部分が勝敗を分ける大きなファクターになるかもしれない。
 フィリオはお気に入りのチェックのシャツに壮大なテーマ曲で入場。対するニンジャは軽快なトランス調の曲で体でリズムを取りながら花道を歩く。その後ろにはショーグンの姿も見える。互いにカッと目を見開いて、視線を外さない二人。軽く拳を合わせてコーナーへと下がった。

第5試合1R10分、2R5分
1R 7分09秒 KO(スタンドでの膝蹴り)
 ライト級の外国人頂上対決として、マニアから最大級の注目を浴びている一戦である。昨年のライト級GPでベスト4になった者同士。「今回のアゼレード戦は、ライト級のランキングを決めるような試合だと思っている。3位を決めるために彼と闘うという意識をね。勝つ自信はもちろんある」というハンセンに対し、「ふん、俺は2位も3位も全く興味がないぜ。やるならチャンピオンになる事を目指しているからな!」とうそぶくアゼレード。
 ハンセンが「アゼレードはワイルドでスタミナがあって、蹴りが強くて多彩な選手という印象だね。ああいうトリッキーな選手と闘うのは初めてだから、予測不可能」と警戒心を持っているといえば、アゼレードは「ハンセンのテクニックには、コレといって警戒するものはないね。ハンセンは俺を倒せるようなテクニックを持っていないよ。とにかく試合がすぐに終わるように頑張る」と眼中にないと言わんばかり。
 五味隆典が保持するPRIDEライト級王座への、挑戦者決定戦とも言われている一戦。注目度はマックスだ。ブラジルVSノルウェー、サッカーのライバル国がPRIDEのリングという戦場で合間見える。
 クロスさせて組んでいた腕を大きく上げ、天を何度も指差すアゼレード。花道でカメラに向かい、得意のハイキックを繰り出す大サービス。なんとトップロープをノータッチで飛び越えてリングに転がり込む。一方、ハンセンは左の拳を大きく突き上げながら登場、歓声にガッツポーズで応える。

第4試合1R10分、2R5分
1R 4分55秒 グラウンドでの膝蹴り
 ニンジャ×フィリオに続く、ウェルター級外国人同士の注目の一戦である。昨年、アンドレイ・シモノフに勝利しながらも、拳の負傷によりGP参戦を棒に振ったカーン。「もし僕がGPに出ていたら? 王者が変わっていただろうね」と不敵な笑みを浮かべる。拳の治療中も可能な限りトレーニングを続けていたというカーンは12月のAFCで完全復活、「最近、自信を持っている技なんだよ」というスピニングチョークで一本勝ちを収めている。「試合はスタンドから始まるものだからスタンドでの攻防は必要なものなんだ」と語るカーンだが、「グラウンドに関しては間違いなく自分の方が上だろうね」と寝技に絶対の自信を持っている。
 対するウィアーはイギリスの金網イベント「CageRage」の83kg級のエースとして活躍しているベテランストライカー。変幻自在の技を繰り出すことから付けられたニックネームは”魔術師(ウィザード)”、長い手足を使ったハイキックとヒザ蹴りを武器に、UFC最短記録のKO勝利を収めたこともある。「ファンを楽しませる試合をしたい。特にイギリスのファンを喜ばせたい。僕はイギリスを背中に感じて戦うんだ」と、背負うものは大きいとウィアー。カーンを下して武士道レギュラーの座を掴みたいところだ。勝負の分かれ目はスタンドの打撃をどちらが制すか、だ。スピリットMCのベルトを肩にかけたカーンはリングへ向かった。

第3試合1R10分、2R5分
1R 3分59秒 TKO(サッカーボールキック)
 今成正和の欠場によって急遽、出場のチャンスを得たアライ。「いつでも試合に出られるコンディションを作る事を心がけている」と緊急参戦にも不安はなく、「チャンスだと思う。試合を受けたからには、当然、勝つつもりだし、勝つのは当たり前」と大物食いの野望を燃やす。
 アライはレスリングをバックボーンに持っているが、得意としているのは打撃だ。特に高橋義生と同じジムに通っているボクシングには自信を持つ。「スタンドで闘いますよ。僕にはそれしか出来ないですから。パンチで対抗します」というアライの勝負どころは「ミドルレンジでの打ち合い。パンチの回転力で勝負します」という。
 パルヴァーは昨年のライト級GPで目を負傷し、手術を行った。しかし、その間も肉体改造を怠る事無く、今回は初めて減量する事になったというほど体が大きくなっている。「どんな相手でも自分のスタイルを貫くだけさ。自分のスタイルを貫き、いい試合をするだけ。相手がどうこうは関係ない。僕のハートはPRIDEのリングに上がるだけで、エキサイティングなんだ」と余裕の笑みを浮かべるパルヴァー。
 彼はアメリカでの中軽量級選手の地位向上を目指す活動を、率先して行っている。それをアピールするために武士道は格好の舞台。だからこそ負けられない、という気持ちが強い。背負う物が違うのだ。
 キャップを目深に被り、牙の描かれたマウスピースを剥き出しにしてパルヴァーが登場。笑みさえ浮かべ、余裕の表情でシャドーボクシング、さらに両手を振り上げて観客からの声援を煽る。アライはドレッドヘアーで、うつむき加減に静かに入場。セコンドには高橋義生が付いている。

第2試合1R10分、2R5分
1R 2分29秒 フロントチョーク
 昨年、五味と激闘を繰り広げた川尻達也に続けとばかりに、川尻の盟友・石田光洋がPRIDE武士道に初参戦! 無尽蔵のスタミナと圧倒的なレスリング力を武器に、脅威のラッシングパワーで相手をねじ伏せる。見る者にも伝わる気持ちの入ったファイトスタイルが身上だ。それは石田本人も承知の上、「自分の気持ちを見て欲しい」と公言する。試合前のインタビューでは物腰柔らかに「期待と不安は半々ですよ」と苦笑いを浮かべる石田だが、リングに上がれば豹変するのもこの男の真骨頂だ。
 ライト級王者・五味と過去に闘った経験もあるロドリゲス。一時は試合から遠ざかっていた時期があったものの、グレイシーバッハ・オークランドからアメリカン・トップチームへ移籍。最新鋭の練習環境で復活の時を待っていた。「石田はタフな選手だけど、どういう闘いをしてくるか分かっているよ」と、対策は万全の様子だ。石田の「僕とロドリゲス選手にしか出来ない熱い試合をしたいと思います」という言葉に大きくうなづいたロドリゲス。武士道初参戦選手同士の熱い試合が期待できそうだ。
 ロドリゲスはフードを被り視線を落としてのリングイン。石田は「T-BLOOD」のロゴが入った日本の国旗を手に、川尻達也らを引き連れて花道を歩く。そして周囲の期待通り、石田はビッグインパクトを残した!

第1試合1R10分、2R5分
2R終了 判定 3-0
 PRIDE初出場となる池本は、大阪発の格闘技イベント『リアルリズム』のエース。これまで闘ってきた階級よりも体重を下げてのライト級参戦だ。「“何でアイツが出られるんだよ”と思っている人もいると思うんですが、そういう人を試合が終わった時には見返してやりたい」と燃えている。
 池本の持ち味はスピードと日本人離れした手足の長さ。「3kgも違えばスピードもかなり違うと思います。リーチも元々の階級でも長い方だったので、上手く使っていきたい」と自分の武器に自信を持っている。
 イーブスは前回UFCで試合を行ったが、無名に近い若手に不覚をとっている。しかし、「逆に気が引き締まった」という。「あの試合は新しいスタートを切るいいきっかけになったと自分では思っている。自分の過去の戦績を振り返ってみても、連敗した事は一度もない」と心機一転、武士道でのスターティング・オーバーを胸に期している。
 日米“ロングリーチ対決”を制するのはどっちだ!?
 パーカーを着て、入場曲に合わせてステップを刻むイーブス。しかし、右眼がドス黒く腫れあがっているのが気になる。来日後の練習で負傷してしまったのか。池本は『リアルリズム』のメインテーマ曲での入場。自らが活躍する団体『DEEP』そして『リアルリズム』を背負って闘うという意気込みの表れだろう。
大会名称PRIDE 武士道 -其の拾-
開催日2006年04月02日
会 場有明コロシアム